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動物の「戦い」と聞くと、どんな場面を想像するだろう?
牙で噛みつく。
角をぶつける。
爪で引っかく。
あるいは、相手が二度と動かなくなるまで締め上げる。
だいたい物騒である。
ところが以前、
オスのガラガラヘビがメスをめぐって争うときには毒牙を使わず、
互いの体を絡ませて相手を地面へ押し倒すと知った。
締め殺すわけでもない。基本押し倒す。
毒ヘビなのに、噛まずにレスリング。
手足がないのに、よりによってレスリング。

この話をきっかけに、ひとつの疑問が生まれた。
世界で一番平和的な争い方をする動物は、誰なんだろう?
そこで今回は、虫・爬虫類・哺乳類・鳥類・両生類・海の生き物に分けて、
本気で調べてみた。
各部門の優勝者名をクリックすると、生態を確認できます。一部は自動翻訳ページです。
「平和的な争い」の判定基準
前提として、次の5項目をもとに比較した。
- 相手の体に触れない
- 牙・角・爪などの武器を使わない
- 負傷や死亡につながりにくい
- 負けた側が安全に退場できる
- 物理的な戦闘へ発展しにくい
異なる研究を横並びにした、
非公式の平和選手権である。
つまり、私が勝手に「今回調べた候補のなかで一番平和だった動物」を選ぶ。
厳正なる審査である。
審査員は私ひとりだけど。
虫部門|触れずに決着する空中戦

虫部門の優勝者は、ヨーロッパなどの森林に生息する蝶、スペックルド・ウッド。
オスは、メスと出会いやすい木漏れ日の当たる場所を縄張りにする。
別のオスが入ってくると、二匹は互いの近くをグルグルと旋回しながら飛ぶ。
では、空中で体当たりするのか。
しない。
噛みつくのか。
そもそも蝶に牙ないもんね。
研究では、この蝶の縄張り争いは「非接触の空中コンテスト」と説明されている。
二匹で飛び続け、先に諦めて縄張りから離れた方が負け。
残った方が勝者となる。
つまり、
「ここは俺の場所だ」
「いや、俺も欲しい」
「では、先に帰った方が負けということで」
ということである。
殴らない。
噛まない。
押さえつけない。
ただ一緒に飛び、先に疲れた方が帰る。
争いというより、突然始まった持久走。
勝敗には体格だけでなく、
縄張りを守ろうとする意欲や、どれだけ粘れるかが関係すると考えられている。
実に優雅である。
本当にまったく危険はないの?
相手を直接傷つけなくても、完全にノーコストとは限らない。
長時間飛べばエネルギーを消費するし、
目立つ飛び方を続ければ捕食者に狙われる可能性も考えられる。
また、蝶の空中行動については、純粋な闘争なのか、
それとも相手の性別を確認する行動が一部含まれているのか、研究上の議論もある。
それでも、争いそのものが非接触で成立している点は強い。
惜しくも落選した虫
コオロギも、まずは鳴き声で強さや存在を伝える。
しかし、鳴き合いで決着しなければ、接近して噛み合うことがある。
コオロギって口あるんだ・・・
クワガタも相手を殺すことが目的ではなく、角で持ち上げて木から落とす。
ただし、普通に投げている。
平和的ではある。
ただし、やっていることは昆虫界の投げ技一本勝負。
爬虫類部門|ケンカの前に色で交渉

爬虫類部門の優勝者は、エボシカメレオン。
オス同士は、いきなり噛みつくのではなく、
まず離れた位置から互いに体を横向きにして見せる。
そして、体の縞模様や頭部の色を急速に変える。
これは単なる派手な威嚇ではない。
研究では、体の縞模様の明るさが「相手へ近づく可能性」と関係し、
頭部の明るさや色が変わる速さは、勝敗とも関係していた。
つまりカメレオンは、全身の色を使って、
「こちらは、かなりやる気です」
「その色、本気ですか?」
「この色を見ても、まだ来ますか?」
と情報交換している。
相手はその表示を見て、
戦うか、引き下がるかを決められる。
研究者の説明では、勝敗は実際に接触する前に決まることの方が多い。
物理的な戦闘になった場合も、観察された接触戦は5~15秒程度だったという。
ただし、相手が引き下がらなければ、噛みつきなどの物理攻撃へ発展する可能性はある。
カメレオンの体は、戦闘力とやる気を表示する電光掲示板。
資料は全身。プレゼン開始まで約0秒。
ガラガラヘビはどうなった?
今回の調査のきっかけになったガラガラヘビも、有力候補だった。
オス同士は体の前方を持ち上げ、
互いに絡みながら、相手を地面へ押し倒そうとする。
毒牙を持っているのに、代表的な争い方は噛み合いではなくレスリングである。
ただし「ガラガラヘビ同士の争いでは絶対に噛まない」「争いで絶対に死なない」とまでは言えない。
ヘビ類のオス同士の戦闘では噛みつきが起こる種類もおり、
ガラガラヘビ類でも例外的な噛みつきの記録がある。
毒牙を持っているのに、まずは組み技。
見た目の物騒さと競技内容が噛み合わない。
哺乳類部門|武器はまさかの“におい”

哺乳類部門の優勝者は、ワオキツネザル。
このホワホワして可愛い生き物、前にアニタッチ(動物と触れ合える施設)で見たことがある。
もう本当に可愛い。もう優勝でいいんじゃ?ってくらい可愛い。
でもそれは不公平すぎるので頑張って自分を律しようと思う。
手を出すと、ご飯を持っていると思うのか、手のひらをさわさわしてくるんだ〜。
さて、脱線したが、厳正なる審査を続けようと思う。
ワオキツネザルのオスは手首や肩付近に臭腺を持っている。
争いになると、その分泌物を自分の長い尻尾へこすりつけ、臭いのついた尻尾を相手へ向けて振る。
これが「スティンク・ファイト」、日本語にすれば臭いの戦いである。
二匹は相手へ臭いを送り合い、どちらかが引き下がるまで続ける。
短時間で終わる場合もあれば、1時間近く続くこともあるという。
牙や爪ではなく、臭い。
しかも臭いをつけるのは相手ではなく、自分の尻尾。
相手の体には触れない。
ただし、すべての争いを臭いだけで解決するわけではない。
ワオキツネザル同士でも、物理的な攻撃は起こる。
それでも「相手に触れず、どちらかが退くまで専用の信号を送り合う」という条件では、
哺乳類のなかでもかなり強い候補だった。
平和ではある。
平和ではあるが、観客席には行きたくない。
特に風下の最前列は避けたい。
ゴリラもかなり平和的
ゴリラのドラミングも有力だった。
胸を叩いたときの音は体格と関係しており、大きなオスほど低い音を出す傾向が確認されている。
相手はその音を聞くことで、接触する前におおよその体格を判断できる。
殴っているように見えるが、殴っている相手は自分。
鳥類部門|歌で決める縄張り

鳥類部門の優勝者は、クロオビマユミソサザイ。
小さな鳥だが、オスは約25種類もの歌を持っている。
私よりカラオケのレパートリー多い。
隣り合った縄張りのオス同士は、
歌を返したり重ねたりしながら、縄張りの境界を交渉する。
研究では、二羽がどこまで接近したか、どちらが先に後退したか、
どの歌を使ったかなどが細かく記録された。
その結果、歌の種類や使い方が、相手の防衛意欲を探る交渉に関係していることが示された。
「この辺まで俺の縄張りだ」
「いや、そこはこちらの範囲だ」
「では、歌で詰めましょう」
歌の交渉が失敗すれば、追跡や物理的な衝突に進む可能性はある。
それでも最初から突撃せず、歌で相手の意図を探りながら境界線を決めるのは、なかなか文明的だ。
闘いの前に、まず歌合戦を開催。
審査員はいないが、敗者は帰る。
ちなみに、ノスリは……?
ブログ名にもなっているノスリは、ほかの生き物を捕らえて食べる猛禽類。
今回比べているのは、同じ種類の動物同士の争い方。ノスリについては、その争い方を十分に調べられなかった。
今回は平和代表を見送り、審査員席から見守ってもらうことにした。
両生類部門|まずは声で話し合い

両生類部門の優勝者は、ハイイロアマガエル。
オス同士は鳴き声を使い、互いの体格や争う意欲を評価する。
相手との距離や争いの激しさによって、通常の鳴き声から攻撃的な鳴き声へ変化する。
もちろん、カエル同士でも取っ組み合いは起こる。
ただ、研究では鳴き声の特徴を聞き分けながら、
争いを続けるかどうか判断していることが示されている。
まずは声で様子見。
いきなり胸ぐらをつかみに行くタイプではない。
- 通常の鳴き声
- 攻撃的な鳴き声
- それでも決着しなければ取っ組み合い
基本は口論。
話がこじれた場合のみレスリング。
海の生き物部門|水中に響く警告音

海の生き物部門の優勝者は、ルシタニア・トードフィッシュ。
繁殖期のオスは巣を守るため、
「ボートホイッスル」と呼ばれる低い音を出す。
この音には、ほかのオスを縄張りへ近づけない効果がある。
実験では、音を出せないようにしたオスの巣ほど侵入される回数が増えた。
つまり、この魚は実際に相手を追い払う前に、
「ここは使用中ですよ〜」
「入ってこないでくださいね〜」
と水中放送を流している。
ただし、鳴き声には侵入を防ぐ効果があるという研究であり、
すべての直接対決が音だけで終わるという意味ではない。
防犯システムが、ほぼ音声アナウンス。
しかも録音ではない。本人がずっと鳴いている。
疲れないのかな〜
コウイカは体色で交渉する
コウイカのオスは、体の模様や姿勢を変えて、相手へ攻撃の意図や興奮状態を伝える。
危険度が低い段階では、正面から体色を見せ合い、相手の反応を確認する。
おしゃれさんだね。
しかし決着しなければ、つかみ合いや噛みつきに進むことがある。
水中で色を使って話し合う点は平和的だが、交渉決裂後が少々物騒だった。
シャコは本当に交互に殴り合う?
スマッシャー型のシャコの一種は、縄張り争いで相手と向き合い、硬い尾の部分を盾として使う。
一方が尾を相手へ向け、もう一方がそこを打つ。
その後、攻守を交代して再び打つ。
本当に交互に殴り合っていた。
この行動は「テルソン・スパーリング」と呼ばれ、
急所への直撃や致命的な負傷を避けながら、
相手の攻撃力や粘り強さを評価する方法だと考えられている。
防具を使って致命傷を避けている点は、確かに賢い。
しかし、普通に殴っているので平和賞は見送ります。
防具を着けても、殴り合いは殴り合いである。
各部門の判定結果
◎=特に当てはまる、○=おおむね当てはまる、△=条件によっては当てはまらない。
ここで比べるのは、各動物の代表的な「まず最初にどうするか」。
追い詰められた場合の本気モードは別審査とした。
| 部門・優勝者 | 非接触 | 武器なし | 傷つきにくい | 安全に退場 | 接触戦になりにくい |
|---|---|---|---|---|---|
| 虫 スペックルド・ウッド | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |
| 爬虫類 エボシカメレオン | ○ | ◎ | ○ | ○ | △ |
| 哺乳類 ワオキツネザル | ◎ | ◎ | ○ | ○ | △ |
| 鳥類 クロオビマユミソサザイ | ◎ | ◎ | ○ | ○ | △ |
| 両生類 ハイイロアマガエル | ○ | ◎ | ○ | ○ | △ |
| 海 ルシタニア・トードフィッシュ | ◎ | ◎ | ○ | ◎ | ○ |
総合優勝を発表
今回調べた候補のなかで、最も平和的な争い方をしていたのは、
スペックルド・ウッドという蝶だった。
(※私しらべ)
ほかの候補も、色・臭い・歌・鳴き声を使って、不要な負傷を避けている。
しかし、いずれも交渉が決裂すれば、物理的な攻撃へ進む可能性が残る。
それに対して、研究対象となったスペックルド・ウッドの縄張り争いは、
最初から最後まで非接触の空中戦として成立している。
武器を見せない。
殴らない。
噛まない。
押さえつけない。
ただ一緒に飛び、先に諦めた方が帰る。
世界で一番平和的な争いとは、相手を倒すことではなく、自分が先に帰らないことだった。
とはいえ、傍から見れば二匹で仲良く飛んでいるだけである。
本人たちは縄張り争い。人間の目には、優雅な空中散歩。
見習いたい平和さ。
🪶 のすりの研究メモ
調べる前は、「平和な争い」なんて矛盾した言葉だと思っていた。
けれど、色や声で相手の様子を探る動物たちを見て、争いのなかにも、けがを避ける工夫があると気づいた。
最初に気になったガラガラヘビのレスリングも、いま見ると「いきなり毒牙を使わない」ための方法に見える。
「自分はどれくらい強いのか」
「どれくらい本気なのか」
「まだ戦うつもりなのか」
それを先に伝えることで、命懸けの戦闘を避けている。
平和な争いとは、優しい争いというより、互いの強さや意思を正しく伝え、
無駄な危険を避けるための仕組みなのかもしれない。
きっと人間には理由もなくいきなり殴りかかる人もいるし、
現代社会では言葉も命を奪う凶器になり得る。
背景や事情なくただただ相手を傷つけたいだけの人もいる。
そういう人には今回の記事で紹介した生き物たちを見習ってほしい。
ただしワオキツネザル方式を人間が採用するのは、やめておいた方がいい。
くさいもん。あんなに可愛いのに。
私はクロオビマユミソサザイを見習ってまずは歌おうかな。
歌うのは元気に散歩するだけのあの名曲がいい。
不思議な生き物が森に住んでる名作映画の主題歌。
相手の戦意喪失間違いなしだ。
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