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排水口にいるベテラン社員たち
お風呂の排水口。
ドライヤーをかけたあとの床。
朝起きたときの枕。
いる。
髪の毛が、めちゃくちゃいる。
しかも短い産毛ではない。
さっきまで私の頭でそれなりの地位にいたと思われる、立派な長い髪である。
拾って捨てながら、ふと思った。
こんなに毎日、長い髪ばかり抜けているのに、長いままなのはなぜ?
新しく生えてくる髪は、当然ながら頭皮からスタートする。
新人は全員、ほぼ0cm。
一方、辞めていくのは数十cmまで育ったベテラン社員。
頭皮株式会社、深刻な人材流出である。
それなのに私の髪は、翌朝になっても普通に長い。
誰が補充しているんだ。
夜中にこっそり増員しているのか。
もしかして、私が寝ている間に髪同士で引き継ぎが行われている?
気になったので、頭皮株式会社の人事制度――「毛周期」について調べてみました。
先に結論 全員が一斉に辞めないから
髪が毎日抜けても急に短くなったり、なくなったりしない最大の理由は、
髪一本一本が別々のタイミングで生え変わっているからです。
人間の頭には、およそ8万〜12万本の毛髪があるとされます。
そのうち一日に抜けるのは、健康な成人でおよそ70〜100本。
数字だけ聞くと大事件ですが、10万本規模の会社から100名が退職しても、全体の約0.1%です。
しかも残る大多数の髪は、今日も何食わぬ顔で伸びています。
抜けた毛穴でも、次の成長期が始まれば新しい髪が作られます。
つまり頭皮株式会社では、ベテランが退職する一方で、新人が入社し、
現役社員は黙々と勤務を続けている。
毎日少しずつ入れ替わるから、見た目の長さや量は急には変わらないのです。
頭皮株式会社には約10万名が在籍している
頭髪の本数には個人差がありますが、医学資料では健康な成人の頭皮に約8万〜12万本の終毛があると説明されています。
仮に在籍者10万名、一日の退職者100名として計算すると、退職率は一日約0.1%。
100本だけを手に持つと「終わった」という気持ちになりますが、
会社全体から見れば小規模な定期異動です。
なお、排水口に集まると実際より多く見えます。
長い髪は一本でも存在感が強く、何本か絡まると急に小動物くらいの迫力を出してきます。
あれは本数だけでなく、立体演出がうまい。
社員は毛周期という勤務表で動いている
髪を作る毛包は、ずっと休まず働いているわけではありません。
成長期、退行期、休止期を順番に繰り返します。
これを毛周期といいます。
| 毛周期 | おおよその状態 | 頭皮株式会社でたとえると |
|---|---|---|
| 成長期 | 数年間、髪を作り続ける | バリバリ働く現役社員 |
| 退行期 | 数週間かけて成長を終える | 業務終了と引き継ぎ期間 |
| 休止期 | 数か月休み、やがて抜ける | 有給消化中の退職予定者 |
| 脱毛 | 古い髪が毛包から離れる | 最終出勤日。排水口で再会 |
健康な頭皮では、約85〜90%の髪が成長期、約1〜3%が退行期、
約5〜10%が休止期にあるとされます。
つまり、退職準備に入っている社員より、現在進行形で伸びている社員の方が圧倒的に多い。
さらに重要なのが、毛周期は頭全体で同期していないことです。
全員が同じ日に入社し、同じ日に退職する仕組みではありません。
もし同期していたら、数年ごとに人類全員が一斉に丸刈りになります。
毛包の個人プレーに感謝です。

長い髪が抜けて新人が0cmなのに短く見えない理由
ここが今回、一番気になったところです。
たしかに、50cmの髪が一本抜け、その毛穴から0cmの髪が生えたなら、
その一本だけを見れば50cmからほぼゼロへの大幅な人事刷新です。
即戦力不在。
しかし私たちが髪型として見ているのは、その一本ではなく数万〜十万本の集団です。
長い髪が少し抜けても、周囲にはまだ大量の長い髪が残っています。
新人の短い毛は、その先輩たちの間で目立たずに伸びていきます。
頭の上には、生まれたばかりの数mm社員、伸び盛りの若手、肩まで届いた中堅、
背中まで届くベテラン、退職待ちの社員が同時にいます。
外からはロングヘアに見えても、実際には勤続年数も長さも違う髪の集合体です。
そして、髪は毛先から伸びるのではなく、毛根側で新しい細胞が作られ、
下から押し出されるように伸びます。
今ある長い髪も毎日少しずつ長くなっているため、
一部の退職を全体の成長が目立たなくしているのです。

髪の長さは勤続年数で決まる
頭髪は一か月に約1cm伸びるとされます。
個人差はありますが、成長期はおよそ2〜6年、
資料によってはさらに長く続く場合もあると説明されています。
仮に毎月1cm、成長期が5年間なら、切らず、
途中で切れなかった場合の単純計算は約60cmです。
1cm × 12か月 × 5年 = 約60cm
つまり、どこまで髪を伸ばせるかを決めるのは、成長速度だけではありません。
成長期がどれくらい続くか――頭皮株式会社に何年間在籍できるかが重要です。
ものすごく仕事が速くても、試用期間で退職したらロングヘアにはなれない。
髪にも勤続年数がものをいう世界がありました。
ではなぜ眉毛やまつ毛は床まで伸びないのか
同じ毛なら、眉毛やまつ毛も放っておけば髪のように伸びそうです。
でも、眉毛を三つ編みにしている人はあまり見ません。
理由は、体の場所によって成長期の長さが違うからです。
頭髪の成長期は数年間続きますが、眉毛やまつ毛などは成長期がずっと短く、
長くなる前に成長を終えて生え変わります。
もし眉毛にも頭髪と同じ長期雇用制度が採用されていたら、風になびく眉毛、
マフラー代わりになる眉毛、ラーメンに入る眉毛が誕生していたかもしれません。
顔面株式会社、人事制度が部門別で本当によかった。

シャンプーすると抜け毛が増えるように見えるのはなぜ
シャンプー中に髪がたくさん抜けると、「洗ったせいで抜けたのでは」と不安になります。
ただし、その日に見つけた髪のすべてが、その瞬間に突然抜ける運命になったとは限りません。
すでに休止期を終えて抜けやすくなっていた髪が、
洗髪やブラッシングをきっかけにまとまって離れることがあります。
数日洗わなかった場合は、その間に抜けた髪が一度に見つかり、
さらに多く感じることもあります。
シャンプーは犯人というより、退職予定者を出口まで案内した総務担当だった可能性があります。
何本抜けたら異常なのか
一日に抜ける本数には個人差や季節差があり、毎日正確に数えるのも現実的ではありません。
そのため「101本だから病気」のように、本数だけで線を引くことはできません。
大切なのは、以前と比べて急に増えた状態が続くか、髪の密度や分け目に変化があるか、
円形やまだらに抜けていないか、頭皮に赤み・痛み・強いかゆみなどがないかです。
急激な脱毛、明らかな薄毛、部分的な脱毛、頭皮の症状がある場合や、
不安が続く場合は皮膚科へ相談してください。
発熱、手術、出産、強いストレス、急な減量、栄養状態、甲状腺の病気、
薬などがきっかけになって抜け毛が増えることもあります。
自己判断で育毛剤会議を始める前に、まず原因を確認する方が安全です。
頭皮株式会社の福利厚生
ちなみに私の毛髪は、インナーブリーチに縮毛矯正まで課された、なかなかのブラック企業です。
それでも、肩下まで働き続けているベテラン勤続毛たちがいます。
強い。
いや、本当にお疲れさまです。
やはり長期雇用のためには、福利厚生を充実させなければなりません。

わが頭皮株式会社が福利厚生として使っているのが、
モルトベーネの「ディープレイヤー」シャンプー&トリートメント。
美容室で使ってもらったのをきっかけに、かれこれ8年ほど使い続けています。
季節で交代する2つの福利厚生プラン
ディープレイヤーには、仕上がりの違うExSとExGがあります。
- ExS(Extra Sleek):サラサラ、なめらかな仕上がりにしたいとき
- ExG(Extra Glossy):しっとり、まとまりやすくしたいとき
私はどちらか一方に決めず、季節やそのときの髪の状態で使い分けていました。
人間には衣替え。
髪には福利厚生プランの変更です。
ちなみにロフトでも取り扱いがあります。
ただし、店舗によって在庫や取扱商品は異なるので、
目当ての商品がある場合は事前に確認するのがおすすめです。
効果はすごい。でも5ステップは長かった
さらに、ディープレイヤーには5ステップで使うシステムトリートメントもあります。
これは、シャンプーやドライヤーまでを含めた5工程という意味ではありません。
1Rから5Rまで、使うのはすべてトリートメント。
クリーム状やスプレー状の剤を、順番に髪へ重ねていく集中ケアです。
これを使ったあとの髪は、めちゃくちゃきれいでした。
ツヤが出て、毛先までまとまって、思わず何度も触りたくなる仕上がり。
ただし、名前のとおり5ステップ。
自宅のお風呂で毎回やるには、福利厚生担当者の業務負担が重すぎました。
効果には大満足。
でも、面倒くささに負けて制度廃止。
福利厚生にも、運用できる範囲というものがあります。
ディープレイヤーの5ステップトリートメントをAmazonで探す
上の動画は、髪がきれいだったころの記録です。
ブラック企業なりに、福利厚生の効果は出ていたらしい。
整髪料はロレッタシリーズ
同じ会社が作っている「ロレッタ」シリーズの整髪料も、香りがよくておすすめ。
こちらもロフトで見かけることが多いです。
毛周期そのものを変える福利厚生ではありませんが、ブリーチと縮毛矯正を乗り越える社員たちの、
手触りと仕上がりを支える制度として採用を続けています。
美容室で出会ってから約8年。
わが社では、もはや廃止すると社員から抗議が出そうな古参制度です。
🪶 のすりの研究メモ
髪は毎日抜けている。
でも、頭にある約10万本の髪が、全員同時に抜けているわけではない。
伸びている髪。
成長を終えた髪。
退職待ちの髪。
生まれたばかりの髪。
一本一本が別々の毛周期で動いているから、毎日抜けても全体の長さや量は急には変わらない。
つまり私の頭では今日も、ベテランが抜け、新人が生え、中堅が黙々と伸びている。
排水口で見つけた髪も、突然力尽きたわけではなかった。
長い成長期を終え、予定どおり退職した可能性が高い。
お疲れさまでした。
これまで私の頭部を守っていただき、誠にありがとうございました。
なお、欠員補充につきましては、毛根人事部に一任しております。
……できれば多めに採用しておいてください。


