「どうでもいいことが気になって眠れない #01」
眠い。でも気になる。だから調べる。
夜、ペンギンが雪の上をお腹でスーッと滑る動画を見ていました。
かわいい。速い。楽しそう。
……でも、待って。
ペンギンって、あれお腹痛くないの?
人間の私が同じことをしたら、たぶん3秒で後悔します。
雪なら冷たいし、氷なら硬い。
石とかあるかもしれないし、そもそも氷凸凹してるし、摩擦とかさぁ……?
見ているうちにお腹の心配が勝ってきて、寝る前の検索が始まりました。
今回は、あの腹滑りの名前や動き、羽毛の役割、そして肝心の「痛くないのか」まで本気で調べてみます。
この記事の調べ方
公的機関・研究機関・博物館の資料を優先し、確認できた事実と推測を分けています。
先に結論:腹滑りには「トボガン」という名前があった
ペンギンが腹ばいで進む行動は、トボガン/トボガニング と表現されています。
オーストラリア南極プログラムの資料では、アデリーペンギンは氷上に十分な雪があると、腹ばいになってトボガンするのを好む。だそうで。
ヒゲペンギンについても、陸上で腹ばいになり、足で体を押し進め、翼を使う行動が紹介されています。
つまり、動画でたまたま転んだペンギンが、「今のは移動ですぅ……」と押し切っているわけではありません。
実際に使われている移動方法だったのです。
ただし、最初の疑問に対する答えは少し歯切れがよくありません。
トボガンという移動方法があることは確認できました。しかし、滑っている最中のお腹の痛みを直接調べた資料は、今回見つけられませんでした。
こちらはお腹の心配で眠れなくなっているのに、資料は肝心のお腹について見事に無言。
早く私を寝かせてくれぇ……!(寝ろ)
ペンギン本人に聞けたら、この記事は3行で終わるのに。
トボガンってなに?
「トボガン」は、もともと底の平らなそりを指す英語でもあります。
ペンギンについて使う場合は、腹ばいになって雪や地面の上を進む行動を表します。
公的資料で具体的な動きまで確認できたヒゲペンギンの場合は、次のように説明できます。
- 腹ばいになる
- 足で体を押し進める
- 翼も使う
- その姿勢で地面の上を進む
腹ばいですが、足と翼も出動します。
なんだか、海の中だけじゃなくて、氷上も飛んでるみたい。可愛い。
ここで大事なのは、「どの種類も、いつも、まったく同じ方法で滑る」とまでは言えないことです。
今回の図解は、ヒゲペンギンについて資料に明記された動きをもとにしています。

じゃあ、お腹は痛くないの?
いちばん知りたかったところですが、結論は
「今回確認した資料だけでは分からない」 でした。
トボガンが実際に使われる移動方法であることは確認できます。
しかし、次のような研究や説明は見つけられませんでした。
- 滑走中の腹部にどの程度の力がかかるのか
- ペンギンが腹部に痛みを感じているか
- 羽毛や脂肪が、滑走時の衝撃をどの程度やわらげるか
そのため、よく見かける「厚い脂肪がクッションになるから痛くない」「羽毛がクッションになるから平気」という説明は、この記事では採用しません。
ありそうな話と、確かめられた話は別物だからです。
分かったこと/まだ分からないこと
確認できた事実
- トボガンは実際に使われる移動方法
- アデリーペンギンは、十分な雪が氷を覆う状況でトボガンを好む
- ヒゲペンギンは、腹ばいになり、足で進み、翼も使う
- ペンギンの羽毛には断熱や体温調節、外界から体を守る役割がある
今回の調査では分からなかったこと
- トボガン中、腹部に痛みがあるのか
- 羽毛や脂肪が滑走時の衝撃をどの程度やわらげるのか
ペンギンの羽毛は、何をしている?
「痛くない」とは言えない一方で、ペンギンの体を守る羽毛がとても重要なのは確かです。
スミソニアン海洋ポータルによると、ペンギンの羽毛には、体温を調節する、断熱する、外界から身を守る、水中での抵抗を小さくする、といった役割があります。
また、尾の付け根にある尾脂腺の油を羽毛に広げ、水をはじくのに役立てています。
イギリス南極調査所も、ペンギンには重なり合う防水性の羽毛があり、皮膚との間に空気を保って暖かさを守ると説明しています。
ただし、これは 寒さや水などから体を守る仕組み の話です。
羽毛はかなり優秀です。
でも、何でも「羽毛のおかげ」で片づけるのは、羽毛に仕事を任せすぎ。
そこから一足飛びに「だから氷の上を滑ってもお腹は痛くない」と結論づけることはできません。
羽毛に防護・断熱機能がある事実と、滑走時の痛みの有無は、別々に考える必要があります。
そもそも、なぜお腹で滑るの?
トボガンという立派な名前まであるので、理由も一発で分かると思いました。
研究はそんなに親切ではありませんでした。
確認できた範囲では、トボガンはペンギンが地上を進むために実際に使う方法です。
アデリーペンギンの資料は「氷に十分な雪が積もると好んでトボガンする」としており、ヒゲペンギンの資料は足と翼を使って進む様子を説明しています。
ここから、雪の状態によって選ばれる移動方法のひとつだと合理的に考えられます。
一方、今回確認した資料だけでは、トボガンの目的をすべて「体力の節約」と断定できませんでした。
「暑いときのクールダウン」という説明も裏付けを確認できなかったため、この記事では結論に含めません。
すべてのペンギンが氷の上を滑るわけではない
「ペンギン=南極の氷」というイメージは強いかもしれません。
しかし、スミソニアン海洋ポータルによると、南極大陸に足を踏み入れるペンギンは一部で、アデリーとコウテイペンギンだけが南極大陸だけに生息します。
ガラパゴスペンギンやフンボルトペンギンなど、氷のない、より暖かい地域に暮らす種類もいます。
さらに、同じトボガンでも、アデリーの資料は「雪が十分にある氷上」、ヒゲペンギンの資料はより広く「陸上」と記しています。
そのため正確には、ペンギンという大きなくくり全体に「みんな氷の上を腹滑りする」と当てはめることはできません。
みんな氷をスイーッとしてるのかと思ってた!
のすりの研究メモ
確認できた事実
トボガンは実在する移動方法です。
アデリーペンギンやヒゲペンギンについて、公的資料に記載があります。
資料から合理的に考えられること
雪など、地面の状態に応じて選ばれる移動方法のひとつだと考えられます。
推測
羽毛や脂肪が滑走時の衝撃をやわらげる可能性は想像できますが、今回確認した資料による裏付けはありません。
今回の調査では分からなかったこと
滑走中の腹部の痛み、衝撃の程度、痛みを避ける仕組みについては分かりませんでした。
最初は「きっと、ふかふかの羽毛が守っているのだろう」と軽く考えていました。
しかし調べてみると、羽毛の断熱性は確認できても、痛みの答えにはなりませんでした。
知っている事実をつなげれば、それらしい説明は作れます。
しかし、それらしい説明と、確認できた答えは違います。
今回の自由研究
疑問
ペンギンってお腹痛くないの?
分かった!
腹滑りは「トボガン」という実際の移動方法です。
まだ謎!
本当に痛くないかは分かりませんでした。
のすりの結論
ペンギン本人に聞いてみたい!

こうして今日も、知らなくても困らない知識が増えていきます。
なお、ここまで調べたころには、眠気はすっかりどこかへ行っていました。
シリーズ名に偽りなしです。
次に眠れなくなるのは、どんな「どうでもいい疑問」でしょうか……。
寝かせてくれぇぇぇ!!
……いや、寝ろ。(2回目)
参考資料
- オーストラリア南極プログラム「アデリーペンギン」(原題:Adélie penguin)
https://www.antarctica.gov.au/about-antarctica/animals/penguins/adelie-penguin/
アデリーペンギンが十分な雪のある氷上でトボガンを好むこと、南極での生息について確認。 - オーストラリア南極プログラム「ヒゲペンギン」(原題:Chinstrap penguin)
https://www.antarctica.gov.au/about-antarctica/animals/penguins/chinstrap-penguin/
腹ばいになり、足で体を押し進め、翼を使うトボガンの動きを確認。 - イギリス南極調査所「ペンギン」(原題:Penguins)
https://www.bas.ac.uk/about/antarctica/wildlife/penguins/
羽毛の防水性、羽毛と皮膚の間の空気による保温について確認。 - スミソニアン海洋ポータル「ペンギン」(原題:Penguins)
https://ocean.si.edu/ocean-life/seabirds/penguins
羽毛の断熱・体温調節・防護機能、尾脂腺の油による撥水、生息環境の多様性について確認。
※海外資料のタイトルは、読みやすいよう当ブログで日本語に訳して表記しています。正式な日本語版タイトルではありません。


